営業が苦手になった理由
僕は昔から、営業を受けるのが苦手でした。
前の事務所に勤めていた頃は、毎日のように営業電話がかかってきました。
「お世話になっております」と言われても、実際にはまったく面識がない会社。
「〇〇担当の方いらっしゃいますか?」とそれらしく聞いてくるのに、担当者名を尋ねると「分かりません」と返ってくる。
ただ数を打っているだけなのが透けて見えていました。
中には、録音された営業トークが一方的に流れるだけという電話もありました。
そのたびに作業が止まり、効率が下がっていくのを実感していました。
あれはほんと、作業効率をぶち壊す存在でした。
――だから僕は、営業が大の苦手なんです。
独立して直面した矛盾
ところが、独立して税理士事務所を立ち上げた途端、立場は逆になりました。
今度は自分が「サービスを届ける側」=営業する立場になったのです。
営業されるのは苦手。
でも営業しなければ仕事は来ない。
ここで矛盾に直面しました。
さらに追い打ちをかけるように感じたのは、営業のしつこさです。
僕のホームページのお問い合わせフォームには、
「税理士紹介会社・保険代理店など、営業目的のお問い合わせは固くお断りしています」
と明記しています。
それでも平気で営業メールは届きます。
断りが書かれていても無視される――その姿勢そのものに、強い違和感を持ちました。
そして、この“しつこさ”や“不透明さ”を象徴する出来事も経験しました。
あるクラウド会計ソフトを契約しようとしたときのことです。
普通にホームページから契約できると思っていたのに、まずは Zoom 面談への参加が必須。
料金もホームページには載っておらず、面談に出ないとサービス内容も料金体系も分からない仕組みでした。
「契約する気はあるんだから、先に情報を出してほしい」と思っても、それは許されない。
そこからは 1日おきに電話、無視すると 3日おきにまた電話。
最後まで「とりあえず Zoom で話しましょう」と押し切られる流れでした。
僕はクラウド会計を業務に使っていますが、こういうやり方に触れると、正直テンションが下がります。
サービスそのものは便利でも、営業のやり方ひとつでここまで印象が悪くなる。
営業しない営業とは
そんな経験からたどり着いたのが、「営業しない営業」というスタンスです。
営業しない営業とは、僕にとって プル型の営業 のことです。
こちらから追いかけるのではなく、情報を公開して、お客さんのほうから選んでもらうスタイル。
- 情報を隠さない
料金やサービス内容を最初から公開する。 - 人柄を隠さない
プロフィールに趣味も書き、合わない人には最初から離れてもらう。 - 相手の時間を奪わない
こちらから電話やメールで追いかけることはしない。 - 対象外の仕事も明記する
たとえば僕は「記帳代行」は受けていません。
これは「丸投げ」になってしまい、お互いにとって良い形ではないからです。
詳しくはこちらにまとめています

つまり営業しない営業とは、
「相手に判断材料をすべて渡した上で、選んでもらう仕組みをつくること」。
結果的に、これは効率化そのものです。
不必要なやり取りはなくなる。
合わない人は自然に離れていく。
残った人は最初から共感している人だから、仕事がスムーズに進む。
僕が実際にやっていること
やっていることはシンプルです。
ブログで発信する
自分の考え方や価値観をブログに書いて、僕がどんな人間なのかを知ってもらう。
「会ってから説明」ではなく、最初から全部オープンにしています。
プロフィールに趣味も書く
仕事の経歴や専門分野だけじゃなく、趣味や個人的なことも詳しく書いています。
ある友人からは「趣味を出しすぎると、依頼したいのに“遊び人っぽい”印象になって減るんじゃない?」と言われたことがあります。
でも僕は逆だと思っています。
趣味の段階で「なんか合わなそうだな」と思われて問い合わせが来ないなら、その時点でミスマッチが防げている。
合わない人は最初から来ない。
これも効率化です。
営業を避けて税理士になった理由
正直に言うと、僕はそもそも営業が苦手で税理士になりました。
「資格を取れば営業なんてしなくても仕事が来るだろう」
大学生の頃から、そんな風に考えていたんです。
就職活動でも、自己PRや売り込みをするのがどうしても苦手で、
「だったら資格を持っていれば、自分を売り込まなくてもやっていける」と思っていました。
実際、資格を取ったら本当にその通りでした。
面接でも特に自己PRを工夫したわけじゃなく、普通に喋っていただけなのに内定はもらえたんです。
そのときは心の中で「やっぱり資格って最強だな。もう営業なんて一生しなくていいじゃん」と思っていました。
独立したら、営業しなくてもウハウハだろう――そう本気で信じていたんです。
でも現実は、当然ながらそんなに甘くない。
営業をしなければ仕事は来ない。
けれど僕は営業が嫌い。
そこでたどり着いたのが「営業しない営業」というやり方です。
まとめ
僕にとって「営業しない営業」は特別なノウハウではありません。
自分がされて苦手だと感じたことはしない。
必要な情報は最初から全部オープンにする。
それはつまり、僕の価値観そのものです。
学生の頃は「資格さえ取ればウハウハ」と思っていました。
今は「合う人とだけ続けられる」ほうが、ずっと価値があると思っています。