前に勤めていた事務所では、記帳代行が仕事の大半でした。
毎月、コンビニの袋にぎっしり詰められたレシートが届く。
封を開けると、タバコのにおいがふわっと広がる。
その袋をひっくり返して、レシートを一枚ずつ仕訳に打ち込む。
気づけば一日が終わっていました。
正直、そのときから「これって本当に経営に役立ってるのかな?」と疑問を感じていました。
だから僕は独立してから、丸投げの記帳代行は受けないと決めています。
コンビニ袋いっぱいのレシートを見て思ったこと
前の事務所では、そんな記帳代行の日々でした。
そしてあるとき、経理を丸投げしていたお客様のケースで、不正が発覚。
現金の入力を家族に任せていたんですが、経営者自身が数字を見ていなかったため、気づくのがかなり遅れてしまったんです。
極端な例かもしれませんが、あれ以来「丸投げってやっぱり怖い」と強く思うようになりました。
自分で経理するのは正直めんどい。でも意味はある
独立してからは、自分の経理も全部やっています。
これがまた、正直めんどくさい。
でも資金繰りの管理に直結するから、やらないわけにはいかないんです。
僕は対策として、毎週月曜の朝イチに経理をやる習慣にしてます。
- 現金はできるだけ使わずにクレジットカード払い
- 会計ソフトと連動させて入力の手間を減らす
- 入力が必要な分はExcelでまとめてからインポート
こうしておくと整理もしやすいし、あとから見返すのもラクなんです。
正直、僕だってラクしたいですけどね。
もし自分が税理士を選ぶ立場なら、記帳代行してくれる方が助かると思います。
だから独立して「うちは記帳代行はやりません」と決めるのは勇気がいりました。
ほとんどの事務所ではそれが“当たり前”だからです。
それでもあえて受けないと決めたのは、自分が本当にやりたい税理士の仕事はそこじゃないと思ったからです。
作業員にはなりたくない。数字の話がしたい
丸投げされた瞬間、税理士は“作業員”になります。
それに、ひとり税理士でやる以上、記帳代行まで請け負うとどうしても時間が足りません。
僕は単純に入力作業が嫌いだし、紙の束を見るのも苦手です。
正直に言えば、そういう作業に追われてお客様と数字の話をする時間を削るくらいなら、最初から受けない方がいいと思っています。
経営者に届くのは、処理が終わったあと、だいたい1か月前の数字。
もし売上が急に落ちていても、気づくのは翌月の半ば。
その時点では打ち手が限られ、資金繰りに大きなリスクを抱えます。
これは経営にとって致命的です。
だからこそ、記帳は単なる作業ではなく「経営の健康診断」なんです。
経営者自身が数字に触れ、その場で把握できていれば、資金繰りの変化や売上の異変にすぐ気づける。
僕は答えを押しつけたいわけじゃありません。
決めるのは経営者自身。僕は横で支えて、安心して決断できるように背中を押すだけ。
だからこそ「丸投げ」は受けないと決めています。
結局、数字って嘘つかないんですよね。