記帳代行から逃げるために独立

独立する前、勤めていた事務所の所長にこう言われました。
「今の時代、単価が下がってるし集客は難しいから、記帳代行をやらないなんて無理だよ」

確かに、記帳代行をやらない税理士事務所は少数派です。
今でも「やるべきなんじゃないか」と迷う時があります。

それでも、やらないと決めています。
いや、“やれなかった”のほうが正しいかもしれません。

目次

逃げるように独立

結論から言うと、
記帳代行から逃げるために独立しました。

これが、僕の一番大切な軸です。

独立前は、昔ながらの事務所に勤めていました。
仕事の時間の大半が記帳代行。

毎日毎日、コンビニのレシートを見ながら
ひたすら入力する日々。

実は、その事務所に転職したとき、
「記帳代行はやらない」という条件で入ったんです。
でも、その約束は守られませんでした。

気づけばまた、
レシートを前にして数字を打ち込む毎日。
あの瞬間、「もうここに居続けるのは違うな」と思いました。

電気代、通信費、家賃……固定費を入力するたびに
「これ、先月と全く同じじゃん」と思ってました。

税理士資格がなくてもできる仕事。
資格があってもなくても、やることは同じ。
そこにもどかしさを感じていました。

そして、年に1回、1年分のレシートが束で届く。
あのビニール袋を開ける瞬間の、
あの嫌な気持ち。今でも覚えてます。

「ただ入力するだけでお金がもらえるなんて楽じゃん」
そう思う人もいるかもしれません。

でも僕には無理でした。
これをやるために税理士になったんじゃない、と。

だから、独立のときに心に決めました。
記帳代行はやらないと。

記帳代行が嫌だった理由

具体的に、何が嫌だったのか。
正直に書きます。

1. コンビニのレシートをただ入力するのが嫌だ

弁当、タバコ……生活の匂いがするレシートを
1枚1枚広げて、手で押さえながら入力する。
あの感覚が、どうしても好きになれませんでした。

2. 毎月同じことを入力するのが飽きる

電気代、通信費、家賃。ほぼ同額。
「これ、前月コピーでよくない?」と何度思ったことか。
でも日付と金額が微妙に違うから、結局手入力。

この虚無感。正直つらかったです。

3. 税理士資格がなくてもできる仕事

これが一番きつかったです。
税理士試験、ほんとに大変でした。

それなのに、やってる仕事は資格不要の入力作業。
「何のために勉強したんだろう」と
何度も思いました。

4. レシートの束が届くたびに気が重くなる

年に1回、確定申告前に届く、1年分のレシート。
あのビニール袋を見ると、この世の終わりだと思ってしまうほどでした。

この作業を、あと何十年も続けるのか?
無理だと思いました。

それでも、やらない理由

正直、迷う時はあります。
月末の売上を見て
「やっぱり記帳代行もやっておけば安定するのに…」
と思うこともある。

所長の言葉が頭をよぎります。
「0から独立は厳しい」
たぶん、あの言葉は正しいんだと思います。

でも、思い出すんです。なぜ独立したのかを。

記帳代行から逃げるため。
税理士として、やりたいことに集中するため。
コンビニのレシートじゃなく、
経営者の悩みに向き合うため。

この軸がぶれたら、独立した意味がない。

たぶん、これからも迷うと思います。
でも、“やらない”と決めた以上、
そこには戻らない。

そもそも、税理士業界の平均年齢は60歳です。
そんな中で、30歳で独立した時点で、
僕はたぶん異端です。

でも、起業ってそういうものかなと思うんですよね。

誰しも、何か自分の「これだけは譲れない」軸があって始める。
他人から見たら「そんな理由で?」って思われるようなことでも。

実際、記帳代行が嫌で独立なんて、
他の税理士に知られたら笑われるかもしれません。

でも、僕にとってはそれが大切な軸なんです。

嫌なことを我慢して安定を取るのか。
不安でも、自分の軸を守る人生を選ぶのか。

どっちが正解かは、正直わかりません。
ただ、僕は後者を選びました。

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この記事を書いた人

吉澤 徳信のアバター 吉澤 徳信 税理士

30代のクラウド特化税理士。
経営者の時間を創り出すための業務効率化、税金のTIPSを発信。
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